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2012年2月18日
北海道生活協同組合連合会
会長理事 麻 田 信 二


 原子力発電所の重大事故が起きた後、団塊世代である私は、将来の子どもたちに大変申し訳ないことをしてきたのではないかと言う気持ちになりました。もし、泊原発で放射能漏れ事故が起きた場合には、北海道の基幹産業である農林水産業と観光業は壊滅的な被害になると考えたからです。
 日本は、唯一の被爆国でありながら、政府や一部のマスコミによる原子力の平和利用のプロパガンダが、原子力技術の持つ危険性から国民の目や耳を遠ざけてしまいました。どんなに科学技術が発達しても、人間は木の葉一枚作ることが出来ません。それなのに、科学技術が発展し生活が豊かになるにつれ、科学技術が様々な問題を解決する事ができると考える人間の傲慢さが増してしましました。スリーマイルやチェルノブイリの事故が起きても、活断層だらけの地震大国日本列島に原発の安全神話が形成されてしまったのです。
 私は北海道庁に勤め、そのほとんどを農業行政に携わってきました。既に「成長の限界」ということが言われておりましたので、道庁の仕事の中で考えていたことは、地球の歴史から見れば、僅か約1万年前に農耕を始めたことにより食料が増産されるようになり、人口が急速に増加し、それまで日々の食料を確保するために生きていた人類が、食料生産以外の活動が可能になり、活動の幅が大きく広がり、文明が生まれました。そして、科学技術の発達は、産業革命による工業の発達を促し、人類社会は進歩と言う大きな変貌を遂げました。
 しかしながら、今日の豊かな文明社会が築かれてきた一方で、地球人口は70億人に達し、南北問題は解決するどころか栄養不足の飢餓人口が10億人、安全な水を確保できない人が12億人という世界を作り出しています。先進工業国においては経済格差の拡大が進み、森林破壊、地球温暖化、生物多様性の喪失、土壌の流亡、化石資源の枯渇、化学物質による地球汚染など、地球上に暮らす生命の持続性が脅かされ、核兵器を作り出した人類は、滅亡の危機を迎えていると言わざるを得ません。
 将来の子どもたちのために、健全な北海道の美しい大地を守り、安全・安心の食料を持続的に生産供給する事が北海道の使命であり役割であると考え、土づくりを基本に据えた農業、化学農薬や化学肥料を使用しない有機農業を北海道農業のスタンダードにしたいという夢を抱きながら、わが国では最初になる食の安心安全条例や遺伝子組み作物の栽培を規制するための条例制定に携わってきました。放射能や化学物質で食料を生み出す大地を汚染・毒化しては絶対にしてはいけません。北海道の基幹産業である農林水産業と観光業を維持発展することなしには北海道は存在できません。
 酪農学園の創立者である黒澤酉蔵先生は、今から、40年前の北海道の新聞に「国土の汚染」という文章を載せました。一部を紹介しますと、「国土は国民の母体であって、健全なる国土からは健全なる国民が生まれるし、不健全なる国土からは不健全なる国民が生まれる。国土を汚染、毒化することは、国民を知らず知らずの間に滅亡に陥れる重大なる罪悪といわねばならぬ。」を書いています。
 この黒澤酉蔵先生の恩師は、わが国の公害問題の先達者である田中正造ですが、足尾鉱毒事件に際し、国力増強よりも鉱毒から大地を守り住民の健康を守ることであると、明治天皇に死を覚悟してまで鉱山の操業停止を直訴した義人です。田中正造は、真の文明は国土を汚さず、人を殺さずと訴えかけています。
 北海道と同じ人口のデンマークでは、第一次オイルショックの時、電気の自給率は僅か2%程度でしたが、国民は原発を作らないことを選択し、官民挙げて風力やバイオガス発電などの自然再生エネルギーの開発に務め、電気の自給率は150%を超え、再生エネルギーは3割近くまで増加しています。デンマークの食料自給率は300%ですが、この間、日本の食料自給率は60%台から40%にまで下がりました。先人たちは、デンマークより資源に恵まれている北海道を東洋のデンマークへとの夢を持っていましたが、この30年間の政策の違いにより、北海道とデンマークには大きな差が生じています。
 北海道には、太陽の光、風力、地熱、木質など再生循環できるバイオマス資源、雪や氷も含めた豊かな水は無尽蔵です。原発に頼る必要は全くありません。むしろ地域に産業を生み出し、若者の雇用の場さえ大きく拡大することさえ出来ます。
 原発事故を契機に、自然再生エネルギーの開発利用を促進することが、将来の子どもたちに対する今を生きる私たちの責任です。そのためには、一日も早い脱原発の決断が求められています。
 食料と環境の問題は、国民一人ひとりの問題であり、持続的にこの美しい地球を維持していくためには、私たちの生活を見直さなければなりません。2012年は国連が決議した国際協同組合年です。「一人は万人のために、万人は一人のために」という協同組合主義こそがこれからの社会の基本です。原発に依存しない社会を作る運動を地球全体に広げていく出発年にしなくてはなりません。このことが、核兵器の廃絶と国際平和に必ずつながるものと考えています。




 
 

 
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